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服に袖を通した瞬間、こんなに胸を躍らせたのはいつぶりだろう。

sakaikun

sakaikun酒井健史さん

 服に袖を通した瞬間、こんなに胸を躍らせたのはいつぶりだろう。そう感じるほど、真新しいピカピカの、それでいて懐かしい記憶が蘇ってくるようなひと時を過ごしていた。スマートで洗練されていながら、体全体をゆったりと包み込むような着心地。ユニセックスに着こなせるその一着が、自分の前向きな気持ちさえ、そっと後押ししてくれるようだった。
 控えめに置かれた看板とショップカードを目印に、ビルの四階までしばらく階段を登った先にあるショップ〈sakaikun〉。オーナーは店名の通り、酒井健史さん。やさしそうな見た目そのままの穏やかな人だ。お店にゆったりと置かれたアイテムは、明るい光が差し込む空間に似合うシンプルな色合いのものが多い。しかしよく見ると、シルエットやサイズ、素材感などに、細かなこだわりと確かな個性が感じられる。またメンズ・レディースをはっきり分けず、ユニセックスに身につけられるものが多いのも特徴だ。「気に入ったものを、自由に手にとって欲しくて。実際に着てはじめて分かることってたくさんあるので、まずは体験してほしいなと」。
 一つのアイテムとは、長く付き合うことにある。納得いくまで選び抜いた一着は、今時のファストファッションのような値段ではない。洗濯などの手入れや扱いなど、ついつい神経質になりがちだが、酒井さんはこう話す。「きちんとつくられた服は縫い方や素材も計算され尽くしているから、何度も繰り返し着て洗っても大丈夫なんです。でもそういうモノとしての良さっていうのは、着てみないと分からないもので。だから、見るだけじゃなく、やっぱり実際に着てほしくて。仕入れるときも、デザイン性だけじゃなく実用性も重視しています」。
 モノとしての魅力。それは表面的なデザインだけではなく、もっと深い部分に込められていた。このお店に並んだ服は、どれも酒井さんが納得したものだけ。「ある人がここで服を買ってくれたら、それって長崎のまちに自分の“好き”が1つ増えたってことじゃないですか。それがすごくうれしいんです」。ありふれた日常の景色を変えるきっかけはすぐそこにあって、それをカタチとして大切に、何年何十年も付き合っていけることは、幸せだと思う。

Editing Data

・基本情報
長崎市江戸町2-28
リバーガーデンEDO402
13:00~20:00
火曜休
Pなし

 

・取材メモ
取材日…201810/19(木)
天候…晴れ
取材時間…1時間20分
来店回数…2回目

振り返っても、当時の自分に示唆の多い話だと感じる。そしてそのサラリーマンの男性は

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