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他の場所と、どこか空気が違う。

武雄市山内町 黒髪山周辺

セトレ グラバーズハウス 長崎

この前レンタルしたスパイ映画で印象的だった「Manners Maketh Man」というセリフは、イギリスの格言らしい。「礼儀が人を作る」なんて言われると、もはや自分が何者なのかよく分からなくなるのは、何を隠そう食事のマナーに対する自信のなさからきている。箸の持ち方は不器用すぎてまるであやとり。もちろんテーブルにズラリと並んだナイフ・フォーク・スプーンの使う順番なんてサッパリだ。それでも今日、前菜からデザートまで、ホテルクオリティのコース料理をきちんと?堪能できたのは〈セトレ グラバーズハウス 長崎〉スタッフのさりげない配慮のなせる技であり、何よりどの料理もすんなり腑に落ちるほど、確かなおいしさに満ちあふれていたからだ。
 予想した以上に華やかな前菜は、見とれているうちにウェイターの説明が終わってしまった。確か、地元で採れた食材を使ったムースや和え物だったはず。一口ごとに酸味や甘み、旨みが複雑に顔を覗かせ、最後まで飽きることがない。次に出てきたスープの「ビシソワーズ」という聞きなれない言葉に不安も覚えるも、「ジャガイモの冷製スープです」という親切な解説で一安心。ここではスプーンの音を立てないように……なんて気をつける必要がないほど見事なお皿の曲線に助けられながら、なるほど、ジャガイモの爽やかな甘さと香りが口の中でゆっくりと広がる。さりげなく置かれていたあたたかなパンもクオリティが高く、自然と次のメインディッシュへの期待感が高まっていった。
 ウェイターがゆっくり丁寧にテーブルの上に置いたのは「長崎和牛のロースト」。適度に赤みを残した牛肉に、さっぱりとしたソースがよく合う。しかしむしろ驚いたのは、添えられた色とりどりの野菜の存在感だ。島原の農家が無農薬で育てているそうで、季節ごとに内容が替わるそう。ソースなしでもハッキリとした味わいが楽しめた。肉も野菜も、小さく一口大に切ることさえ忘れてあっという間に完食。かわいい盛り付けのデザートと食後のコーヒーで一息ついて振り返ると、途中からマナーを気にする暇がないほど、目の前の一皿に没頭して楽しんでいた。果たしてこれでいいのかどうか。出口のない答え合わせでまたしても自信をなくしていると、お皿を下げにきたウェイターが「お味はどうでしたか?」と笑顔。すぐさま「とっても美味しかったです」と答えた自分の言葉には、どうも自信が持てそうだった。

Editing Data

・基本情報
長崎市南山手町2-28
095-827-7777
http://www.hotelsetre-nagasaki.com

 

・取材メモ
取材日…7/5(木)
天候…雨
食事時間…90分
来店回数…1回目

「喫茶店の良さは、たった一日や一回じゃ分からないよね」。

葡萄畑

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