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服に袖を通した瞬間、こんなに胸を躍らせたのはいつぶりだろう。

sakaikun

SHADY磯崎健人さん

 実に、堅実で実直な人だといつも感じる。多くの観光客が集まる波佐見・西の原にあっても、あくまでまっすぐ追い求めるのはコーヒーのおいしさ。そのためには地味で面倒な作業も厭わず、ただひたすらに豆と向き合う。きちんと地に足のついた佇まいは、お店の歴史を背負っているからか、それとも自分なりのペースで進むと心に決めているからなのか。
 波佐見・西の原に磯崎健人さんが〈SHADY〉をオープンしてから8年になる。先代は、佐世保で長い間コーヒーの老舗〈イソザキコーヒー〉を営んでいたそう。健人さんが場所を移して引き継ぐ形となったが、今でも先代の祖父が生み出したオリジナルブレンド「Isozaki the first」は健在だ。5種類の豆をブレンドした凛とした一杯は、豆のもつ個性がくっきりと感じられながらも、決してばらけることなく一体となって口に美味をもたらす。「昔ながらなんですけど、完成されてるんですよね」。そう話す健人さんは、一つひとつの地道な作業にも手を抜くことがない。雑味のない味わいを求めて、とにかく正確かつスピーディーに豆の選別(ハンドピッキング)を行う。「きちんと豆を吟味して焙煎することで、決して有名じゃない豆だって本来のおいしさを引き出せるんですよ」。季節や天候に合わせて、焙煎は1秒単位で調整。一番ベストなタイミングを見定めるその視線こそ、まさに職人ならではのものだった。
 昨年、販売所の横に開放的なカフェスペースを設けた健人さん。「自分たちの想いを伝える場所にしたかったんです」とのこと。シンプルなカウンターでは目の前でコーヒーを淹れる手元まで見ることができる。ポコポコっとゆっくり膨らみ、少しずつ、一滴ずつ焦らすようにカップに落ちるコーヒー。一連の動きを見ていると、不思議と心が落ち着いた。お話の途中で用意してくれたのは、健人さんが心を込めて生み出した、〈Shady〉のオリジナルブレンド。口に広がる印象的な味わいと、スッと入って消えていく滑らかな飲み心地。父の味わいを受け継いできた健人さんの心がこもった一杯。大切に、一口ずつ堪能。これからも、飲み続けたいと思った。

Editing Data

・基本情報
東彼杵郡波佐見町井石郷2174-2
0956-85-2324
10:00~18:00
水曜休
12席
Pあり
禁煙

・取材メモ
取材日…11/12(日)
天候…曇り
取材時間…3分
来店回数…4回目

間違いなく、パン屋という世間一般のまとめ方が似合わないお店だった。

Oguraya

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